こころの健康について ②


心理療法の目指すもの

 心理相談室を開業するにあたり、心理療法を通して私が利用者の方に提供できるものはなにか、あるいはなにを提供したいと思っているのかということを考えました。

 いいかえれば、利用者のこころの健康に寄与するために目指すべきものはなにかということです。

こころの自由

 最初に思い浮かんだのが「こころの自由」でした。

 心理臨床の実践を重ねる中で、苦しみを抱えている方の多くは、「○○しないといけない」、「△△であるべきだ」といった考えを自分自身や周囲に向けることで、身動きがとれなくなっていることが少なくないと感じたからです。

 これしかないと思うことがあったとしても、現実にはそれ以外の様々な選択肢があることが少なくありません。

 けれども、こころのゆとりが失われているとき、私たちは自由にものを考えることが難しくなってしまいます。そんなとき、こころは固く硬直してしまい、他者からの有益な情報や助言もこころに入らなくなってしまうのです。

 こうしたこころの不自由さから抜け出すお手伝いをすることが、こころの健康のためにまず必要だろうと考えました。

こころのつながり

 次に浮かんだのが、「こころのつながり」でした。

 心理療法の中で語られる不安の多くが孤独に結びついていると感じたからです。

 社会のあり方が目まぐるしく変化する中で、私たちは様々な束縛や制約から自由になったといえますが、「自己責任」という言葉と共に、多くのことをひとりで背負い込まざるをえない状況に追い込まれやすくもなりました。

 「人に迷惑をかけたくない」という言葉は臨床の場で度々耳にする言葉です。これは社会生活をおくるうえで大切な心がけかもしれませんが、いつのまにかそれが「絶対に人に迷惑をかけてはいけない」に置き換わってしまい、人に何かをしてもらうことに強い不安や葛藤を抱えている方にお会いすることがよくあります。

 安心して人を頼ることができないとき、その人のこころにはぬぐい難い孤独があります。身近な人や社会とのつながりを実感し、安心感を抱きながら日々の生活を送れることも、こころの健康には欠かせないだろうと考えました。

自分とのつながり

 最後に浮かんだのが、「自分とのつながり」です。

 人前で失敗をしたり、自分の力量の限界に直面するようなことがあった時、私たちは恥の感情や自己嫌悪を抱きがちです。

 人は誰しもこころの中でこうありたいという理想のイメージを抱きます。しかし、こころの中のイメージとは異なり、私たちは思うようにならない生身の身体をもった存在ですし、様々な社会的制約のなかで生活をしています。

 そのため、理想と現実のギャップに直面することは避けられませんし、時にそれが大きな挫折や傷つきとなり、自分のことが嫌でたまらなくなることもあるかもしれません。

 こうしたギャップに折り合いをつけていくことが、安定した自己イメージにつながっていくのですが、これはなかなか難しいことでもあります。

 価値観が多様化し、自分自身の軸となるものを保ちづらくなっている現代社会において、自己評価は揺れ動きやすく、人からの評価に敏感にならざるをえない側面を誰しも抱えていると思います。

 社会生活をおくるうえで、他者から認められることはもちろん大切ではありますが、そこばかりがクローズアップされると、日々の生活が息苦しくなってしまいます。

 他者と共にいながら自分らしくあること、長所だけでなく短所も含めた自分の持ち味を認めて大事に思えることは、こころの健康の必須の要素だと私は考えています。

おわりに

 「こころの自由」、「こころのつながり」、「自分とのつながり」この3つが、こころの健康を支えるものだと私は考えています。そして、「自由(Liberty)」と「つながり(Link)」の英語の頭文字をとって、「千葉こころの相談室L」を相談室の名前にしました。

 今回は少し抽象的な内容になってしまったかもしれません。この3つの要素については、また機会をあらためてもう少し具体的に書かせていただこうと思っています。


PAGE TOP