はじめに
ストレスについての話が続いてきましたが、今回から2回にわたってストレスの対処について解説していきます。ストレスの対処にはいろいろなアプローチや考え方がありますが、ここではまず3つのアプローチに分けて考えてみたいと思います。
バケツから水があふれないようにするためには
ストレスの対処について講演をする機会はよくあるのですが、私はいつも雨が降っている屋外にバケツが置いてある状況をイメージしてもらうことから話を始めます。
雨がストレッサー、バケツを人としたとき、バケツから水があふれだしてしまう状況(ストレスがその人のキャパシティを超えてしまった状態)を避けるにはどうすればいいでしょうか?
すぐに思いつく方法は、バケツを屋根があるところに運んだり、バケツに蓋をして水が入らないようにするというものです。ストレス状況でいえば、ストレッサーから個人がこれ以上負荷を負わないように環境調整をするということです。
他には、バケツの水があふれないように、水がたまったら定期的に中の水を捨てて水の量を減らすという方法もあるでしょう。ストレス状況でいえば、よくストレス解消とかストレス発散とよばれるようなアプローチがこれに該当します。
もうひとつは、バケツのサイズを大きくして、水をあふれ出しにくくするというものです。個人のストレッサーに対する耐性を上げ、ストレス状況にもちこたえやすくなることを目指すものです。
バケツのたとえで見てきたように、ストレスへの対処のアプローチは、①環境調整、②気分転換、③ストレス耐性の向上の大きく3つに分けられます
環境調整と気分転換について
上記の3つのアプローチはどれも有効ではあるのですが、効果の現れ方や実行しやすさの面で違いがあり、状況に合わせた使い分けが有効です。
まず、環境調整ですが、これはストレスの原因が明確な場合や、ストレス負荷がすでにかなり強まっている状況において有効なアプローチになります。
わかりやすい例でいえば、業務量が多すぎて疲労が蓄積しているうえ、締め切りのプレッシャーから焦りや不安が強まっているような状況を考えてみましょう。ストレスの要因ははっきりしていますし、業務上の負荷を軽減することが一番効果的であるのはすぐにわかると思います。また、心身の不調から、業務や日常生活に支障をきたすような状態がすでに生じているようであれば、医師の判断のもと、精神医学的な治療や休職が必要な場合もあります。
バケツの例でも、この方法は一番手っ取り早い解決方法ではあるのですが、現実のストレス場面では、この方法をとるのは難しい場合があると思います。業務量を減らすことが職場状況によっては困難なことも多いでしょうし、精神科受診や休職に当事者が二の足を踏む場合もあります。それでも、本当に限界を感じた時には、周囲にSOSを出すことが必要です。ひとりで抱え込まず、職場でも、医療機関でも、アプローチしやすい人にご自身の状況を伝えましょう。
次に、気分転換についてですが、これは多くの人が普段の生活の中で実践しているのではないかと思います。親しい仲間と飲みに行ったり、カラオケをしたり、スポーツをしたり、旅行に行ったり、趣味の活動を楽しんだりというように、人それぞれの方法をすでに行っているのではないかと思います。
日常的なストレスへの対処としては、この方法が一番実行しやすいと思いますし、自分の好きなことを楽しんでリフレッシュできるのであれば、それに越したことはないでしょう。
しかし、注意しなければいけない点もあります。飲酒、ギャンブル、買い物など依存性のある活動にはまり込んでしまうことや、疲労が蓄積している状態であるのに余暇の時間も過活動ぎみに過ごしてしまうことなど、ストレス解消のつもりでやっていることが、かえって心身の健康状態を悪化させてしまう場合があるからです。 また、ストレス負荷が強い場合には、こうした気晴らしのようなアプローチだけでは限界もあります。特に普段なら楽しいはずのことが楽しめなくなっているようなっていたり、意欲がわかずなにもしたくないような状態が続くようなときには、うつ病の可能性もあるので注意が必要です。
ストレス耐性の向上
最後が、ストレス耐性の向上です。耐性という言葉から打たれ強さのようなものをイメージされるかもしれませんが、これは我慢強くなるという意味ではありません。より正確に言えば、ストレスへの対処能力の向上といった方がよいかもしれません。つまり、ストレスと上手につきあえるようになるということです。
ストレッサー(ストレス要因)に気づき、それに対して能動的に対処することで悪影響を減らし、ストレスを管理することをコーピング(ストレスコーピング)と言います。
ストレスへの対処で一番重要になってくるのが、このコーピングになります。コーピングについての詳しい解説は、次回行いたいと思います。