ストレスについて ②


はじめに

 ストレスは、ストレスの要因となるストレッサーとそれに対する個々人の反応であるストレス(ストレス反応)に分けて考える必要があることを前回は解説しました。

 今回は、ストレスの要因となるものとストレスのあらわれ方について見ていきたいと思います。

ライフイベントとストレス

 ストレスの度合いを測る測定法として「ライフイベント法」というものがあります。これは、重大な出来事(ライフイベント)によって引き起こされた生活上の変化が、人の心身の健康状態に影響を及ぼすという考え方に基づいています。

 ホームズとレイというアメリカ人が作成した社会的再適応評価尺度(S.R.R.S)が有名で、0~100点の間でそれぞれのストレスの強度を「ライフイベント得点」として示しています。この尺度をもとに、日本でも「勤労者ストレス調査表」が作成されました。

 この調査で示された一番ストレスの強度が高いものは何だと思いますか?

 答えは、「配偶者の死」で83点です。これについで、「会社の倒産」が74点、「親族の死」が73点、「離婚」が72点と続きます。興味のある方は、下記の引用文献を見ていただくと、ストレス点数のランキングを確認できます。

 ところで、この尺度は「結婚」を50点として基準にしています。人生の中でも指折りのおめでたい出来事のストレス強度が、なんで50もあるのかと思いますよね。他にも、点数はそこまで高くないものの、「昇進」や「妊娠」なども尺度の項目には含まれています。

 一般的によい出来事とされているものがなぜストレッサーになるのかといえば、それが生活上の大きな変化をもたらすものだからです。人間にとって、環境の変化というのは、それだけで大きなストレスを生じさせるものなのです。

 5月病という言葉がありますが、なぜ5月なのかというと、日本では4月が年度の始まりであり、そこで多くの人が環境の変化を経験することが関係しています。環境の変化が生じた直後は緊張感もあり気持ちが張り詰めていることで、ストレスを自覚しづらい面がありますが、GWの長期休暇を挟んで、その影響が出始めるのが5月というタイミングなわけです。

ストレッサー(ストレス要因)の種類

 次に、代表的なストレス要因を見ていきたいと思います。これは、大きく3つに分けられます。

 ひとつめは、身体の不調(生理的ストレス)です。忙しくて疲れているとき、身体に痛みがあるときなどを思い浮かべていただけば、これがストレスになるのはよくわかると思います。

 ふたつめは、社会生活(心理的・社会的ストレス)です。先ほどあげたライフイベントなどが典型例といえますし、人間関係のトラブルや借金などの金銭トラブルなどが含まれます。おそらく、多くの方がストレスとして思い浮かべるものはここに含まれるものなのではないでしょうか。

 みっつめは、環境(物理的・科学的ストレス)です。真夏に職場のエアコンが壊れたとか、すぐ近くで工事をしていてものすごい音が聞こえてくるといった状況だと、仕事も手につかなくなってしまいますよね。ここまで極端な例でなくても、聴覚などの感覚が敏感な方は、より小さな刺激でもストレスを体験しやすい面があります。

ストレスのあらわれ方

 ストレスのあらわれ方についてもふれておきたいと思います。

 一般的に、ストレスは身体、行動、こころの順にあらわれるといわれています。

 第一段階のサインとして身体の様々な症状としてあらわれてきます。頭痛、腹痛、肩こりなどの痛み、めまい、吐き気などがよく見られがちな症状です。これらがさらに悪化すると、心身症といって、ストレス由来の身体の病気になってしまいます。胃潰瘍、過敏性腸症候群、不整脈などがよく見られやすい心身症です。

 第二段階のサインが、行動上の問題です。集中力の低下、生活が不規則になる、飲酒量が増える、遅刻や欠勤が増えるといった形で、日常生活に影響を与えるような問題行動が生じてきます。

 そして、第三段階として精神面のサインが生じてきます。情緒不安定になったり、無気力で無感情になったりするなど、元々のその人の性格とは異なった一面を見せるようになったら要注意といえます。

 このように、段階が進んでしまう前に、まずは身体の不調が生じた時点で、ストレスの影響を考え、早めの対策を打てるようにしておくことが大切です。

頑張るストレスと我慢するストレス

 最後に、ストレスには「頑張るストレス」と「我慢するストレス」があるということにもふれておきたいと思います。

 頑張るストレスとは、たくさんのことをしなければいけない状況です。仕事がたてこんでいるうえに、プライベートでもやらなければいけないことが山積みになっているというようなときが、まさにこの頑張るストレスに該当します。忙しいことがあたりまえになっていると、この頑張るストレスは気づきにくい面があるので注意が必要です。

 我慢するストレスとは、嫌なことから逃れられない状況をさします。職場の対人トラブルであったり、嫌だなとおもっていることを毎日やらなければいけないといったことが該当します。これも程度の差はあれ、誰しも経験することといえるでしょう。

 先ほど、ストレスのあらわれ方のところで身体、行動、こころの順でストレスはあらわれやすいという話をしましたが、頑張るストレスは身体の症状としてあらわれやすく、我慢するストレスは心理的なストレス反応につながりやすいといわれています。

 さらに、我慢するストレスが主な原因となって、こころの病につながる反応を体内で引き起こすことが分かってきています。ストレスホルモンとよばれているコルチゾールが過剰に分泌され、これがこころと身体に大きな影響を与えるのです。

おわりに

 ストレス要因となるストレッサーの種類、ストレスのあらわれ方を中心に解説をしてきました。

 これらのストレスについての基礎知識をふまえたうえで、次回はストレスへの対処について考えてみたいと思います。

引用文献

夏目誠、村田弘 1993 公衆衛生研究;42(3)

https://www.niph.go.jp/journal/data/42-3/199342030005.pdf


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